DCは60歳になるまでは受け取りができない
確定拠出年金推進協会 代表理事の藤田雅彦です。
確定拠出年金(DC)の加入を検討する時やすでにDCに加入されている方に知っておいてほしいDCの受取りについて4回に分けて解説します。
受取りのことも知っておくと安心して始めることができますね。
日本でDC制度がスタートしたのは、2001年10月です。その時のキャッチフレーズの一つに「転職してもポータブル」という言葉がありました。これは、DCのポータビリティ制度のことを言っています。今では、「転職」が当たり前となりましたが、当時は、まだ転職する人は少数でした。私は、1999年に銀行から外資系の証券会社に転職したので、少数派の一人ということになります。
ポータブルとは、英語でPortable、日本語では「持ち運びできる」という意味です。転職した際に個人のDCの資産を別のDCへ持ち運びながら、老後に向けて資産形成していくように設計されています。
例えば、企業型DCに加入していて、別の会社に転職したとします。その会社が企業型DCを導入していたら、今まで貯めた企業型DCの資産を次の会社の企業型DCに持ち運んで増やしていけるのです。このことを専門用語で「移換」といいます。もし、転職した会社に企業型DCが無い場合、iDeCoに移換することができます。逆の場合もあって、iDeCoに加入している人が企業型DCのある会社に転職した又は所属している会社が企業型DCを始めたといった場合、iDeCoで貯めた資産を企業型DCに移換できます。
具体的には、「移換依頼書」を提出することで、簡単に移換できます。ただし、移換には2カ月程度かかることと今まで運用していた資産は、いったん売却して現金に換えて移換されるので、移管先のDCでは、改めて「運用指図」を行う必要があることを知っておいてください。
ポータビリティ制度により、老後に向けての資産形成を行いやすくしている一方で、途中解約できる基準がとても厳しくなっています。専門用語では、「中途脱退」といいます。ここでは、その基準について述べませんが、はっきり言って「ほぼ不可能」です。
DCは、老後の資産形成においては「最強」のツールと言われていますが、通常の会社の退職金のように転職した際に受け取ることができないし、定期預金やNISAのように、気軽に解約もできません。逆に、解約できないような制度にしているからこそ老後に向けた資産形成に適していると言えます。厚生労働省から私たちへのメッセージを、平たい言葉でいうと「将来、公的年金は減るかもしれないので、各自、DCで老後の備えを行ってください。その為に、積立時、運用時、受取時にふんだんに税制優遇を与えます。」となるのでしょう。